【ユリ特集】純潔のシンボル。花言葉・魅力とおすすめの飾り方を花屋が解説!

夏の代表的な花のひとつ、「ユリ」。

堂々と咲く大輪の花と、清楚な雰囲気が魅力です。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉があるように、美しい女性を表す花でもあります。

今回はそんなユリについて、基礎知識や魅力、種類と特徴などについて紹介します。また、暑い夏に気になるケア方法も、葉の処理や水換えなどの点からお伝えします。最後におすすめの生け方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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ユリの基礎知識・魅力

清楚な花の代表のような花で、花束やウェディングなどでも昔から馴染みのあるユリ。まずはユリの基礎知識として、歴史や神話などを紹介します。

 

ユリの歴史

日本でのユリの歴史は古く、「日本書紀」や「古事記」などにユリに関する記述が残されています。

古事記には、山の麓に住んでいた媛蹈鞴五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)がササユリを摘んでいる姿を天武天皇が見初めたことから、皇后となったいう話が。これが、日本で最も古いユリに関する記述だといわれているそうです。

他にも、万葉集にはユリについて詠んだ歌が多く収録されており、古くから親しまれていた花であることがわかります。

 夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきもの
              ー 坂上郎女(さかのうえのいらつめ)

 (現代語訳)
 :夏の野の茂みに、ひっそり咲いている姫百合(ひめゆり)のように、人   に知られない恋というのは、苦しいものだ。

ユリの神話・逸話

ギリシア神話でユリは、結婚や母性を司る女神・ヘラの聖花。

ヘラの母乳には、飲んだ人間が不死身になるという特別な力がありました。そのため、ヘラが寝ている間にゼウスが息子ヘラクレスにその母乳を飲ませようと画策。

ヘラクレスが母乳を飲んだ際、天にこぼれ落ちた母乳が天の川(ミルキーウェイ)、地にこぼれた母乳が白いユリの花になったといわれています。

また、ユリは聖母マリアの花としても知られています。

聖母マリアが受胎告知を受ける場面の絵画では、マリアのそばに白いユリが置かれていたり、大天使ガブリエルが白いユリを持っていたりします。その白いユリは、彼女の処女性や純潔さを表しているのだそう。

このような神話や逸話から、白いユリは「純潔」のシンボルとされているんですね。

ユリの花言葉

ユリの花言葉は、上記でも触れたように「純粋」や「威厳」です。
色別にもそれぞれ花言葉があるので、以下に紹介します。

  • 白色:「純潔」「威厳」
  • 赤:「虚栄心」
  • オレンジ:「華麗」
  • 黄色:「偽り」


花言葉の「純粋」や「純潔」は聖母マリアや女神ヘラから、「威厳」は花の堂々とした姿からきているそう。

ただし赤や黄色は、純粋な美しいイメージとは異なるため、花言葉を重視する際は注意が必要です。



赤いユリの「虚栄心」は、キリストが十字架にかけられた際、ほかの花は首をもたげたのに対し、ユリだけが頭を上げていたためキリストに見つめられ、驕りに気づいて赤くなったという逸話からきています。

ユリの種類・各特徴について

現在、ユリは世界中で愛されていますが、原産地は日本やヨーロッパです。日本に多く自生しているユリをシーボルトが持ち帰り、品種改良などが重ねられてさまざまな種類のユリが誕生しました。

ユリの種類はとても多く、品種は100種類以上あります。花の形状から「テッポウユリ」系、「ヤマユリ」系、「スカシユリ」系、「カノコユリ」系の4種に分けることができ、それぞれ交配種も多数あります。


テッポウユリ

花の形状がラッパ状のテッポウユリ(鉄砲百合)。
葉っぱが楕円形で、互い違いになっていることが特徴です。花が横向きにいくつも咲き、香りも良いため、最もポピュラーなユリではないでしょうか。冠婚葬祭でも馴染みのあるユリで、九州から沖縄にかけて生息しています。


ヤマユリ

漏斗状で花弁が大きく反り返るヤマユリ(山百合)。
花びらは白色に黄色い筋が入っていて、えんじ色か褐色の斑があります。
斑のないものや筋が赤色のものも、少数ですが出回っています。香りが強く、園芸品種として人気のあるユリで、主に本州に自生しています。


スカシユリ

花の形状が杯状または星状のスカシユリ(透かし百合)。
花を上向きにつけることも特徴で、葉っぱは平たくて細長く、互い違いになっています。鮮明な黄色や橙色、赤色の鮮やかな色味が夏らしく、明るい雰囲気のあるユリの種類です。赤褐色の斑点を持っている種類もあります。花びらの付け根が細いため、やや隙間があることから「透かし」百合という和名になったといいます。

 

カノコユリ

鐘状または球状で花弁が大きく反り返るのが特徴のカノコユリ。
鹿の子とは、花びらに鹿の子の美しい模様があることから名付けられました。主に九州や四国に自生していて、昔から日本人に馴染みのあるユリです。しかしカノコユリは絶滅危惧種Ⅱ類に分類されている、レッドリストの花。カノコユリの球根は食用にもなり、薬用としても滋養強壮などの効果があるといわれているんですよ。

(分類の参考:花図鑑 切花 / 2001 / 草土出版)

 

ユリのケア方法


ユリはケアをしっかりとすれば、花持ちがとても良くなります。今回は、葉や花粉の処理、水換えについてご紹介します。正しいケア方法で、夏でもお花を長く楽しみましょう。

 

【ケア方法① 葉の処理】

まずは葉の処理です。お花屋さんでユリを買うと、茎の下の方まで葉がついていることがあります。

花瓶にユリを生ける際、水につかる部分についている葉はしっかりと処理をしてから生けましょう。葉が水についてしまうと腐りやすくなり、水のなかで雑菌の繁殖が進んでしまいます。

また、栄養が余分な葉にいってしまい、花や蕾にいき渡らなくなってしまうため、予め葉を処理することは大切。葉の処理をきちんと行うことで、最後まで花を楽しむことができます。

【ケア方法② 花粉の処理】

ユリは、大きな花の真ん中に花粉がたくさんついていますよね。
この花粉を取り除くと、花びらを汚さずに、最後まで綺麗にユリを飾ることができます。また、誤ってユリに触れてしまった際などにも、ユリの花粉が衣服などにつかないため安心です。

ユリの花が大きく開けば開くほど花粉も開いて来るので、蕾が開きかけた時にサッととってしまうのがおすすめ。花が開いてしまって花粉が粉っぽくなってしまったら、ピンセットや割り箸を使うと取りやすいですよ。


【ケア方法③ 飾る場所の温度】


花に最適な温度は5〜10℃といわれています。窓側などの直射日光が当たる場所は避け、比較的涼しい部屋などに飾っておきましょう。ただ、冷房の風が直接当たるような場所は気をつけて。冷房の風は乾燥しているので、花の乾燥が進んで早く傷んでしまうことも。

また、花や植物の育成には空気の流れも大切なので、風の通り道となっているような空気の流れが良い場所に飾ってあげるのがおすすめです。


【ケアのポイント④ 水換え】

夏場の水換えは、しっかりと行いましょう。
夏は、暑さで花瓶の中の水温も上昇し、バクテリアなどが繁殖しやすい環境が整ってしまいます。

ユリに限らず、特に夏場にお花を飾る場合は、花瓶の中の水はなるべく小まめに変えるとお花が長持ちします。毎日とはいわずとも、2日に一回は花瓶を洗い、きれいな水に変えておきましょう。また、茎を触ってみてヌメリがあれば、そのヌメリもしっかりと洗い流してくださいね。

ユリのおすすめの生け方


最後にユリのおすすめの生け方を紹介します。
ユリの種類や色などにあわせて、一輪や小花と一緒に生けてみましょう。


【おすすめの生け方① 一輪挿し】


大輪の華やかなユリは、一輪で生けても存在感抜群。
一輪で生ける場合は、花瓶の大きさにあわせてユリの大きさも選びましょう。背の高い花瓶に生けるなら、茎の長さを残してすらっと生けます。背の低い小さめの花瓶に生けるなら、茎はうんと短めに切ってしまってバランスを整えると◎

 

おすすめの生け方② 単体を数本で寄せて

同じ種類のユリを数本寄せて花瓶に生けます。開いた花と蕾のコントラストもまた素敵。蕾が開く様子も楽しめるのがユリの魅力の一つです。高さのバランスをみてカットしましょう。

 

おすすめの生け方③ 小花と合わせる】

他の花と一緒に生けたい場合は、ユリが引き立つように小花を合わせるのがおすすめ。

ユリ以外の花があると、お互いに主張が強くてまとまりにくいかも…と思ってしまうかもしれません。そんなときは、小花を入れることによって花瓶全体の雰囲気がまとまるので、試してみてくださいね。


まとめ


ユリは古事記や万葉集にも登場する、古くから日本で愛されてきた花です。ギリシア神話や逸話でもさまざまな言い伝えがあり、「純潔のシンボル」として、今でも多くの人々を魅了しています。

大輪の花を咲かせる、清楚で可憐なユリ。ぜひこの旬の時期に、多様な種類のユリの中からお気に入りを選んで、清らかな雰囲気を楽しんでみてくださいね。

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