【後編】tokyobike x Lifft 〜フラワーバイクの裏側
トーキョーバイク・金井 一郎 x ボタニック・田中 彰 対談
tokyobike(以下「トーキョーバイク」)のきんちゃんこと、創業者で代表取締役の金井 一郎(カナイ イチロウ)さんと、自身もトーキョーバイクの愛用者であり、リフトを運営するBOTANIC(以下「ボタニック」)代表の田中の対談。前編では、トーキョーバイク誕生のエピソードに始まり、自転車と花の共通点についてうかがいました。後編は、いよいよフラワーバイクのお話から始まります!
自転車 X 花(フラワーバイク)が走る街って、絶対ハッピーだよね
田中:先日、中目黒店の皆さんにご協力をいただき、トーキョーバイクさんの自転車をリフト仕様にして、リフトの花束を自転車のカゴいっぱいに積んだ「フラワーバイク」(JOURNAL #05「『贈る、をもっと楽しく、もっと身近に』Lifftのフラワーバイク」)っていうのをやってみました。こんな感じです。
<中目黒〜代官山エリアで実施したフラワーバイクの様子>
金井:お〜、すごくいいね。
田中:実際に花束を積んだ自転車を走らせて、いくつかのスポットで街ゆく人にミニブーケ(「シェアするブーケ」)をプレゼントしたんです。結果として、ものすごく好評でした!事前に用意した600個のミニブーケは、どのスポットでもあっという間になくなり、さらにみんなが写真をとってシェアしてくれたんです。
自転車で花をこちらからプレゼントに行くって、ボタニックがやりたい世界観がものすごく伝わる方法だったなぁと。やってみて初めて実感しました。
僕らは、みんなに花を買いに来て、いや、まず花を見にきて欲しいんです。だけど、花屋っていうスタイルは、「まず来てください」っていう受け身のスタイルなんです。お客さんにきて欲しいなら、僕らからお客さんの方に出向いたっていいんじゃないかって。
金井:ははは。確かにね。
田中:僕らは、花屋だってただお客さんが来るのを待っていなくても、自分達から自転車で出向いたって、届けに行ったっていいって思っているんです。そうするときの手段って、今までなかったけれど、今回フラワーバイクをやってみて、自転車はすごくしっくりきました。
これまでも、何度かポップアップショップなどをやったことがあったのですが、正直しっくりきていませんでした。でも、今回のフラワーバイクで僕らのスタンスを伝えられた気がするんです。
金井:リュックを背負ってるのもいいね(笑)
田中:そうなんですよ。っぽいかなって。(笑)それに、僕の中では、自転車での花のデリバリーをやりたっていう構想もあるんです。
海外のお花屋さんでは、自転車でのデリバリーを既にやっているところもあります。もちろん、雨の日は車で配達もするところもありますが、自転車の持つ世界観は花と相性がいいから、自転車で届けているらしいんです。
金井:お花を好きな人って環境意識が高い人も多いだろうし、自転車で届けるっていうのは、そういう人たちに受け入れられるだろうね。
田中:そう、そうですよね!やっぱり、フラワーデリバリーの自転車をやりたいな。でも、まだこの話は、ボタニックのメンバー間で合意とってないんですけどね。
金井:ご近所への配達とかいいよね。絶対素敵だよ。看板なんかつくってね。
田中:今回は自転車のボディーはベージュでしたが、今後は白か黒のお花が目立つ色で統一したいです。
金井:ダークグリーンとかも合いそうだよね。
田中:それ絶対いいですね!これ僕らの世界観が伝わるからやったほうがいいな!
金井:トーキョーバイクを始めて、もちろんトーキョーバイクだけでないけれど、自転車が街に溢れ出しました。自転車が増えると街の景色が変わるんですよね。
それが、今度はこんな風に自転車のカゴに花をいっぱい詰めて走る人が出てきたら、それってその街の人は絶対ハッピーだよね。
すごい楽しい画が浮かぶな〜。ぜひ、やってください!
田中:やりたいですね!
金井:自転車と花のセットでイベント出店なんかもやりたいね!
田中:ぜひ、やりましょう!
ぼくら(ボタニック)は、花屋がやらない花屋をやりたい
田中:実は、今回フラワーバイクでご協力いただいたリフトとは別に、僕らボタニックでは、他に2つのブランドを運営しています。
一つは、「ex. flower shop & laboratory(イクス フラワー ショップ アンド ラボラトリー)、以下「イクス」」という、花と緑の専門店。“ラボラトリー”ってお店の名前につけているのは、お客様が“何を楽しいと思っているのか”を調査する場所、実験する場所という意味を込めています。トーキョーバイクのみなさんは、イクスの中目黒店と蔵前店がどちらもご近所なので、実はこの印象が一番強いかもしれませんね。
もう一つは、定期購入で花と新聞をセットで届ける「霽れと褻(ハレとケ)」。新聞も自社で、むしろ僕ら(田中と本日のカメラマン高野)で作っているんです。これは、毎号ある生産者さんを選び、そこで育てられた花と新聞をセットでお送りしています。新聞では、生産者さんの物語や圃場(畑)の様子を伝えたり、飾り方や楽しみ方を伝えたり、あるいは花のアカデミック(生物学的な)側面を伝えたりしているんです。
<右:ex. flower shop & laboratory、左:霽れと褻(ハレとケ)>
金井:へぇ、すごいね。これ毎月実際に行ってるんですか?
田中:そうなんですよ。また、来週も行きますよ(笑)。
僕らは、花屋なんだけど、こういうこともしたいと思っているんです。ただ、「綺麗だよ」っていうことだけじゃなくて、それがどういう風に作られていて、何がどういう風にいい(価値がある)んだよってことを伝えるのも、花屋としてやっていきたいんですよね。
<高知のグロリオサを特集した「霽れと褻(ハレとケ)」11月号>
金井:背後のストーリーを聴くのって、やっぱりいいですよね。飲食もそうだし、ワインもそうだけど、最近僕らの周りで生産者とお客さんを繋ぐ人たちがでてきていて、面白いですよね。
作っている人がどういう気持ちで作っているのかっていうのは、気になりますよね。ずっと真面目にコツコツやる人がいるのも素晴らしいし、逆に、「こういうところを変えたいな!」と思って、今までにない新しいものを生み出す人がいるも好きだな。
田中:それから、これまでのお花の体験って、お花屋さんに行った時に一番テンションが上がって、あとは家に帰ってインスタに撮って、花瓶に入れたらおしましい、ということが多いんじゃないかなと感じてきました。
この「霽れと褻(ハレとケ)」は、お花が家に届いて、箱を開けて、手に取っていただいた時がMAXになる(一番盛り上がる)サービスです。もっと自分の家の中で花を飾ることの楽しみを感じてもらいたい、花の購買体験の時間軸をずらしてみたい、そういう思いで始めたサービスなんです。
僕らは、店舗型の花屋もやっていますし、花屋で花を買ってもらえるのってものすごく嬉く、そのことに誇りも感じています。でも、店舗型の花屋だけが正解じゃないと思っているんです。もっといろんな花の楽しみ方や購買体験を試してみたい。つまり、花屋なんだけど、普通の花屋がやらないことも、たくさんやっていきたいと思っているんです。
オンラインで花を買うことの可能性を探りたい
田中:3年前にこの「霽れと褻(ハレとケ)」を始めて、もっとオンラインで花を買うことの可能性を探りたいと思うようになり、1年前からリフトというオンラインのお花屋さんをはじめました。
特に最近、花ってオンラインのほうが、メリットも多いんじゃないかなと考えるようになりました。
リフトでは、お客様の注文に合わせて契約農家で採花するので、通常よりも鮮度がよい状態でお届けすることができます。また、(受注型なので)お花の廃棄ロスもほとんどありません。さらに、生産農家の情報や、花の扱い方など花に関する情報もより詳しくお伝えすることもできるんです。オンラインのお花屋さんは、お客様にとってもいいことがたくさんあるし、社会的にもいい側面がたくさんあるように思います。
金井:なるほどね。
<熱弁するボタニックの田中>
花と、自転車と、ローカルと
田中:イベント出店で言えば、地方でイベント出店する時に、ぜひその地域で育った花を自転車にディスプレイする、みたいなコラボもさせていただきたいです!
僕のメインの仕事の一つが、僕らの商品の仕入れ先であるお花農家を巡ることなんです。今まで50以上の農家を訪ねてきましたが、今すごく感じているのが、その土地土地の“お花の名産品”って誰も知らないんですよ。ミカンなら愛媛って、日本では当たり前のように知っているけれど、グロリオサなら高知って、誰も知らないですよね。
金井:それは、知らないよね(笑)
田中:それがすごく勿体無いなぁと思うんですよね。チューリップが富山ぐらいだと知っているのかな。
金井:それは知ってますよ。オランダか富山ですよね。
(一同:知らないですよ….)
田中:ほら!こういう感じなんですよ。有名なチューリップですら、知らない人が多い。
僕らの強みって、全国の生産農家を回り続けていることーやっぱりそこだと思うんですよね。たぶん、こんなに巡っている花屋さんってないんじゃないか、と自負してます。
最近、食べ物への意識が変わってきたように、花を選ぶときも、そういう観点から選んでくれる人もいたら嬉しい。また、そういう情報を知ってもらうことで、今までの花の楽しみ方と違った楽しみ方を見出してくれる人もいるんじゃないかな、と思っているんです。
先ほどお話した霽れと褻の新聞だけでなく、リフトでも、サイトの商品ページで生産農家の情報を伝えたり、届く花束に生産地のカードをいれたりすることで、(全国の)お客様へ、お花と一緒にその花が育った場所のストーリーを届けています。
右: 2019年8月号のデンファレを生産する翁長さん>
田中:今後の展開になりますが、リフトとして生産地で開催するイベントに、フラワーバイクを持って行って地元の人にも新しいお花の楽しみ方を見て、体験してもらうっていうのも面白いかなと。僕らも実際にお花の育った街についてより深く理解して、このリフトジャーナルでもお伝えしたり。
金井: 楽しそうだね。画が浮かぶな。背景やストーリーを知るのはやっぱり楽しいし、そのモノや街が身近になるよね。
田中:はい、そういう風にして僕らの提供するお花のサービスの背景に、どういう土地でどういうパートナーさんが協力してくれているってことも、楽しく伝えていきたいですね。
僕が、いろんな街で自転車に花を載せてひたすら走ります!笑
田中:いや〜、本当にまだまだお話したいことはあるのですが、そろそろお時間ですね。
今日は本当にどうもありがとうございました!対談させていただき、僕らが実現していきたい世界への気持ちが強くなってきました。