
トーキョーバイク・金井 一郎 x ボタニック・田中 彰 対談
<対談を終えたばかりの二人。
右:ボタニック 田中、左:トーキョーバイク 金井さん>
2019年年末の中目黒(代官山)の街角に、花束をカゴいっぱいに積んだ2台のフラワーバイク(JOURNAL #05「『贈る、をもっと楽しく、もっと身近に』Lifftのフラワーバイク」)が登場しました。実はこのLifft(以下「リフト」)のフラワーバイクは、私たちの大好きな自転車メーカーのtokyobike(以下「トーキョーバイク」)]とのコラボレーションで実現したものだったのです。
今回は、そんな素敵なご縁をいただいたトーキョーバイクのきんちゃんこと、創業者で代表取締役の金井 一郎(カナイ イチロウ)さんと、自身もトーキョーバイクの愛用者であり、リフトを運営するBOTANIC(以下「ボタニック」)代表の田中が対談させていただきました。前編・後編のロング対談です!
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Profile:金井 一郎さん
株式会社トーキョーバイク代表取締役。大学卒業後、オートバイや自動車関連の会社を数社経験した後、輸入自転車パーツのオンラインショップを立ち上げる。2002年、東京の街を愉しむためのオリジナル自転車「トーキョーバイク」を発売。
“TOKYO SLOW”をコンセプトに作られる街乗り用の自転車は、日本国内のみならず海外でも高い評価を受けている。
Profile:田中 彰
1983年、高知市出身。神戸大学経済学部卒業後、旭硝子株式会社に勤務。 東京・南青山の花屋での修行を経て、BOTANICをスタート。2013年7月、東京・中目黒に花屋「ex. flower shop & laboratory」をオープン。2014年4月、法人化(株式会社BOTANIC)。「花き業界をアップデートする」をコンセプトに、花と新聞の定期便「霽れと褻(ハレとケ)」や、オンデマンドフワラーサービス「Lifft(リフト)」など、様々な花サービスを提供。
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きっかけは、名前。山を走るのが「マウンテンバイク」なら、東京を走るのが「トーキョーバイク」

<tokyobike Shop & Rentals谷中>
田中:まずは、どんなきっかけで「トーキョーバイク」を始めたんですか?金井:「トーキョーバイク」は、その名前を思いついた時から全てが始まりました。
“山を走るのが「マウンテンバイク」なら、東京を走るのが「トーキョーバイク」だと。”
もともとは、インターネットが流行り始めた1999年、自転車好きの人のために、自転車パーツを売るECサイトを作ろうと思い立ちました。それで、ドメインの名前を何にしようかなぁと考えていたところ、思いついたのが「tokyobike.com(トーキョーバイクドットコム)」です。
その名前を思いついたと同時に、東京の街を縦横無尽に走りどこにでも行ける、そんな自転車を作りたいなって思ったんです。
田中:「トーキョーバイク」というブランドのイメージは、初めからあったんですか?
金井:「トーキョーバイク」っていう名前を思いついた時、すぐにそれがどういうものかが、頭の中にありました。「トーキョーバイク」は、とにかく東京の街を楽しく走る自転車。ママチャリとも、マウンテンバイクとも全く違う、東京の街にあった自転車を作ろうと思いましたね。
東京って、ほとんどの道は舗装されているから、マウンテンバイクのような太タいイヤやギアは必要ない。でも、東京は坂が多くて信号でよく止められるから、漕ぎ出しが軽くて、上り坂でも簡単に登れるような、軽くて普通より一回りタイヤの小さい自転車。そんな東京を縦横無尽に走り回れる自転車をつくりたいなって思ったんです。

<トーキョーバイク 金井さん>
田中:デザイン面でもすごくこだわられていると思うんですけど、それも初めからですか?
金井:デザインは、僕が小さい頃あった、細くてシンプルな鉄の自転車のイメージかな。あとは、ロードバイクの乗り心地の良さを普通の人が乗れるように。そんな風に生まれたのがトーキョーバイクです。都会に住んでいる人たちの生活を変えたかったから。
都会に住んでいる人たちの生活を変えたかったから
田中:トーキョーバイクが生まれて、自転車の価値観が変わったって感じています。そういう意図は、ありましたか?
金井:自転車を変えるというよりも、都会に住んでいる人たちの生活を変えるという方が近いですね。それまで都会の生活って、電車で移動する、バスで移動する、歩く、もしくは最寄りの駅までママチャリで行く、そのぐらいの選択肢しかなかったんですよね。でも、街で使えるスポーツバイク(=トーキョーバイク)がその選択肢の中に入った途端に、まったく行動のパターンが変わってきたと思うんですよね。

<トーキョーバイクのある風景>
田中:あ〜、全く花も同じだなぁって思いますね。僕も花を扱っていて、花って日常の中で幸せを感じたり、ライフスタイル(日常)を充実させたりする ツール だなぁって感じる時があるんです。
金井:そう、主役じゃないんですよね。あくまで道具(ツール)。
田中:そう、そうなんですよ!都会って、カチッとしているっていうか、あまり生き物がないなって感じる時があるんです。一方で、花には枯れる良さ があると思っています。だから、家の中に花があると、(家の中に)生きているものの時間軸が加わる。それが花の価値だなぁと。そういう意味で、僕はドライフラワーより生花をオススメすることもあります

<トーキョーバイクの店先には、ボタニックのお花を飾らせていただいています>
自転車と花の意外な共通点
金井:花と自転車の共通点ってもう1つあるなぁと思ったんだけど、それは、「自然を感じる」ってことだと思うんだよね。
田中:あ〜、確かにそうですね。
金井:普段の日常の中でも、例えば服装が変わるタイミングなどで、季節の変化感じることもあるとは思います。ただ、地方にいる時と比べて、東京の生活では、細やかな季節の変化を感じるのは難しいなぁと思います。でも、毎日自転車に乗っていると、風が変わるのを感じたり、あるいはよそ見しながら周りの景色が変わっていくのを見つけたりすることができますよね。
田中:確かに、花も自転車も、そういう意味では都会の生活においても季節を教
えてくれるツールの1つなんですね。日々店頭に並ぶ花が変わっていくことで、季節の細やかな変化を感じられるという意味では、花屋は今の時代にとても稀有な仕事の1つですね。

次回は、いよいよ今回の対談のきっかけにもなったフラワーバイクのお話から、リフトを運営するボタニックが目指す「花屋がやらない花屋!?」のお話へ。お楽しみに!
<後編へ続く>